ヨドコウ迎賓館
(旧山邑家住宅)

※現在保存修理工事のため閉館中
◆開館日
 毎 土・日・水曜日と祝日
◆開館時間
 10:00〜16:00
 (入館は〜15:30)
◆入館料
 大人・大学生は500円
 小・中・高校生は200円
◆所在地
 〒659-0096
 兵庫県芦屋市山手町3-10
◆お問い合わせ
 淀川製鋼所 PRグループ
 TEL:06-6245-9103
 ヨドコウ迎賓館
 TEL:0797-38-1720

建物概要

国指定重要文化財
設計:フランク・ロイド・ライト
実施設計・施工監理:遠藤新・南信
設計年:1918年
竣工年:1924年
構造:鉄筋コンクリート
敷地面積:約5,200
建物面積:約359.1
延べ床面積:約542.43

links

工事だより vol.6

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    前回の工事だよりvol.5でお伝えした飾り石の補修の続報です。

    もしお時間があれば前回の内容を踏まえた上で読んでいただけると、より分かりやすくなるかと思います。

     

    【儀拭

    DSC00221.JPG

     

    【況拭

    ヨドコウ迎賓館 (40).jpg

     

    当館の飾り石には上の写真の通り【儀拭曄抬況拭曚裡下鑪爐△蠅泙垢、どちらも大谷石の砕石、砂、セメントを混ぜて作られています。

    しかし、経年によって剥落・剥離している箇所が多く見受けられました。

     

    そのため、補修にあたって、まず耐久性を高めるために材料や配合比率、仕上げ方などを見直しました。

    ここまでが前回のブログの内容です。

     

    材料の検討が終わり、先に【況拭曚了楾方法が決まりましたので、2つのケースに分けてご紹介します。

     

    1.破損がひどく全体を復原する必要がある場合

     

    全体を3つのパーツに分け、現場施工と、前もって部材を製作して現地で取り付けるプレキャストの、2つの方法を組み合せて対応することになりました。

     

     

    最も大きいパーツ,蓮現場で型枠を取り付けて施工します。

     

    パーツ

    擬石1.jpg

     

    パーツ〕 型枠部材


    型枠取り付け

     

    型枠取り付け完了

     

    取り付けられた型枠の中に、大谷石の砕石、砂、セメントを混ぜた材料を流し込み、材料が固まったら、表面にサンドペーパーをかけて風合いを出します。

     

    残りのパーツ2種類も、それぞれの型枠に材料を流し込んで作ります。

    現場施工ではなく、こちらはプレキャストでの対応です。

     

    パーツ

    擬石2.jpg

     

    [左]パーツ⇒ 型枠 [右]完成した部材

    ?型枠.jpg?.png

     

    パーツ

    擬石3.jpg

     

    [左]パーツM 型枠 [右]完成した部材

    ?型枠.jpg?.png

     

    ´↓すべてのパーツを組み立てると、このようになります。

     

     

    2.部分的な補修を行うケース

     

    部分的な補修の場合は、左官もしくは補修する場所に合わせてパーツのサイズや形を加工して対応します。

     

    補修場所に合わせて加工されたパーツ

     

    パーツ取り付け

     

    以上が、今行っている補修の内容です。

     

    今回ご紹介したのは【況拭曚任垢、こちらは建築当初からのものが比較的残っており、部分的な補修が多くなりそうです。

    一方【儀拭曚藁化が激しいため、現時点での補修は部分的なものにとどめ、今回使用した配合の耐久性を観察した上で全数の補修を行う予定です。

     

    全部で177個ある飾り石ですが、このように一つ一つ手を尽くしながら補修を行っています。

    すべての飾り石の補修が完了するのはまだまだ先になりますが、作業の進捗については随時こちらのブログでご紹介してまいります。

     

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    保存修理工事見学会のご報告

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      11月3日(金・祝)4日(土)に、ヨドコウ迎賓館保存修理工事見学会を開催しました。

       

      2日間とも天気に恵まれ、すっきりとした秋晴れでした。

      芦屋川沿いや当館の敷地内にも赤くなり始めた木々が見受けられ、ちょうど紅葉の見頃を迎えています。

       

      IMG_3790.JPG

       

      当日は10時から、13時半から、の2回の見学会を実施し、各回約20名の方にご参加いただきました。

       

      IMG_3833.JPG

       

      10名ずつ2班に分かれて、2階応接室と4階食堂から説明を開始。

      当館の来歴・全体的な特徴や今回の工事の概要について説明した後、館内を移動し各ポイントでそれぞれの特徴や工事の状況を説明しました。

       

      IMG_3884.JPG

       

      3階の和室では、畳や床板を外した状態をご覧いただきました。床下を見ていただく機会はなかなかありません。
      また東側のバルコニーには、床に使用されている装飾を施した大谷石の敷石を展示しました。

       

      IMG_3804.JPG

       

      3階子ども部屋には、当館の建設当初の模型と今回の工事の概要を説明したパネルを展示しました。

       

       

      4階南側バルコニーです。

      最表層の保護モルタルとその下の防水層をはがした状態で、コンクリートが露出しています。

       

      工事開始前にはここから芦屋市街の景色をご覧いただけたのですが、現在は足場や素屋根のテントで覆われています。

      以前にこちらのブログでもご紹介したように、この足場・素屋根には工夫が施されていて、外側からだとテントに隠れて見えませんが、内側からだと分かりやすいかと思います。

       

      IMG_3854.JPG

       

      今回の見学会では通常は公開していない場所もご覧いただきました。

      上の写真はどこか分かりますでしょうか?

       

      答えは4階食堂横の厨房奥の扉です。今回特別に中に入っていただきました。

      この扉は使用人室や洗濯室・使用人用のトイレに繋がっていて、勝手口に降りる階段もあります。

      使用人が主人やゲストと顔を合わせずに仕事ができるよう動線が分かれているのです。

       

      普段は公開していない場所をもう一つ。

       

      IMG_3813.JPG

       

      4階食堂東側バルコニーです。

      通常公開しているのは先程もお見せした南側バルコニーです。

       

      ここには大谷石で出来た階段があったのですが、工事のため解体して、現在はコンクリートのスロープになっています。(写真の右側は工事用の仮設階段)

      上の写真のスロープの上にあるのが、階段に使われていた大谷石です。三角柱の形をしています。

       

       

      このスロープにアスファルト防水を施し、その上に三角形の大谷石を下から順番にモルタルで固定していきます。

      主に意匠やコストの問題でこのような形状にしたと考えられています。

       

      IMG_3869.JPG

       

      2階の応接室では、質の異なる数種類の大谷石や、補修のために配合を見直している飾り石の材料である山砂や砕石、サンプルとして製作した飾り石用の部材、工事の写真等を展示しました。

      飾り石のサンプルについてはこちらのブログでもご紹介しています。

       

      山砂や砕石のサンプル

       

      約60分解説をしながら館内をまわり、その後30分ほど自由に館内をご見学いただき、90分の見学会は終了です。

       

      参加者の方々は皆さまとても熱心にご見学され、建築関係の方が多かったせいか、専門的な質問もたくさんいただきました。

      当日いただいていない質問等がございましたら、お気軽にコメントにてお問い合わせいただければ回答させていただきます。
       

       

      今回は、初めての工事見学会ということもあってか予想以上のご応募をいただき、各回とも抽選となってしまいました。

      今後もこのような見学会を開催する予定ですので、今回はご参加いただけなかった方も是非またご応募ください。

      予定が決まりましたらホームページ、ブログ、Facebook等でお知らせいたします。

       

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      工事だより vol.5

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        今回は、飾り石の補修についてご紹介します。


        当館では様々な装飾が施されていますが、外観では庇(ひさし)の上に並ぶ飾り石がこの建物のアクセントとなっています。

        どことなくマヤ文明の遺跡のような雰囲気もありますね。

         


        館内に目を向けると、天井周りに小さな窓がいたるところに配置されているのも当館の特徴の一つです。

        小窓の数は全部でなんと170個あります。

         

        KAW_4273.jpg


        しかし、これだけの数がある小窓にもかかわらず、外から見るとほとんど分かりません。
        実は飾り石の少し奥まったところに小窓が設置されているため、一見気付きにくくなっているのです。


        下の写真は食堂の外側にある飾り石ですが、間に小窓が見えているのが分かりますでしょうか?

         

         

        ご来館の際に飾り石をじっくりご覧になる事はあまりないと思いますが、実はこの飾り石には2つの種類があります。

        ここでは、上の写真にある真ん中の軸が突き出たようなデザインのものを儀拭△發Π譴弔離妊競ぅ鵑鬮況燭箸靴討款匆陲靴泙后

         

        図面をご用意しましたので、どうぞご覧ください。

         

        儀 (クリックで拡大)

         

        況 (図面はクリックで拡大)

        ヨドコウ迎賓館 (40).jpg

         

        どちらもシンプルな形が組み合わさって、複雑なデザインとなっています。

        特に儀燭廊況燭茲蠅皀妊競ぅ鵑複雑で、しかも上部の突き出ている部分が斜めの壁(下図のオレンジ線部分)にかかっています。

         

        儀臣婆命


        況燭蝋事現場で型枠を組んで施工しますが、儀燭侶曽は現場施工では難しく、事前に加工場でそれぞれの部材を作って現場で組み立てる、いわゆるプレキャスト工法で施工します。

         

        また、この2種類の飾り石はどちらも大谷石の砕石、砂、セメントを混ぜて作られています。

        しかし、大谷石は水分を含みやすいこともあり、経年によって剥落・剥離している箇所が多く見受けられます。

         

        そこで今回の工事では、耐久性を高めるために材料や配合比率を見直すことになりました。
        表面の風合いも重要なポイントになりますが、これがなかなか調整が難しく、例えば混ぜる砂ひとつとっても、産地や表面の仕上げ方によって、風合いが変わってしまいます

        そのため、材料・配合比率・仕上げ方をそれぞれ変えたサンプルを相当数作りました。

         

        DSC_0415.JPG

         

        その上で、サンプルを水に浸したあと50℃から-20℃の温冷を繰り返したり、サンプルに荷重を加えたりするなどの試験を行い、最適な材料と配合比率を検討しています。

         

        圧縮強度試験

         

        特にI型は、次の修理の参考にするために、今回はあえて実験的な補修にとどめて経年変化を観察する予定です。
        全ての飾り石をきれいに修理できるのは、まだしばらく先になりそうですね。

         

        3階の主寝室や4階のバルコニーなどからこの飾り石を見ることができます。

         


        フランク・ロイド・ライトのデザインを守るため、専門家や行政関係の方々には本当にさまざまな面でご協力をいただきながら工事を進めていますが、文化財の補修の大変さを改めて実感しています。

         

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        情報公開掲示板設置のお知らせ

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          工事の期間中、当館に関する情報や保存修理工事についての情報を皆様にお知らせするための掲示板を設置しました。

           

          場所は駐車場(現在は事務所が建てられています)から正門まで道なりに進んでいただいた途中に2か所あります。下の画像の☆マークをご参考ください。

           

          basyo.jpg

           

           

           

           

          上(正門寄り)の掲示板では工期や工事中の写真、下(駐車場寄り)の掲示板では当館の特徴や来歴、設計者であるフランク・ロイド・ライトなどについて簡単に説明したパネルを載せています。

           

          工事についてのパネルは随時情報を追加していきます。

          当館の近くまで立ち寄られた際にはどうぞご覧ください。

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          工事だより vol.4

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            当館の保存修理工事が始まってから5月で6ヶ月が経ちました。

            現在は建物の周りを完全に足場と素屋根のテントが覆い、写真のような状態になっています。

             

            今回は、この足場と素屋根についてご紹介します。

             

             

            まず、建物の周りを覆っている足場についてです。

             

            一般的に、足場を設置する場合には建物の壁に直接固定して強度を確保することが多いのですが、当館は壁の強度がそれほど強くはない上に重要文化財ということもあり、直接壁と繋ぐ方法は採用していません。

            そのため、足場自体の強度を高めることで強風やねじれへの対策をする必要がありました。

             

            DSC09098.JPG

             

            写真のようにパイプを縦横に張り巡らせ、さらに斜めにも組み込むこと(トラス構造)で補強しています。

             

            また、当館の西側は急な斜面になっていますので、通常の足場以外にも「補強用足場」を設けてさらに安全性を高めています。

             

            迎賓館用2.jpg

            名称未設定-2.jpg

             

            次に素屋根についてです。

             

            今回の修理工事では、防水工事のために屋根の防水層を撤去することから、建物への雨水の浸入を防ぐ目的で素屋根が設置されました。

            過去に行われた修理工事でも設置はしていましたが、今回初めて素屋根にテントシートが使われています。

             

            テントシートを採用した理由の一つにシートの素材の軽さがあります。

            当館は丘の斜面に沿って建てられているため、足場の多くは斜面に設置されます。補強用足場の設置など安全性には十分配慮していますが、今回の工事では地盤への影響を少しでも低減させるために、素屋根の素材を軽いものにしました。

             

            また、高台は風の影響を受けやすいのですが、シートはヒモで確実に足場に留められる構造のため、強風に強いことも、この素材を選んだ理由の一つです。

             

             

            しかし一般的に、テント屋根はシート同士の重ね合わせ部分から漏水しやすいと言われています。その弱点をどのように克服したのでしょうか?

             

            実は、重ね合わせ部分に工夫があるのです。

             

            テントシート重ねあわせ部分断面図

             

            名称未設定-1.jpg

            名称未設定-3.jpg

             

            上図のように、パイプの部分を袋状にして雨水が浸入しないようにし、その外側を樋のようにして(内樋)、水が流れ落ちるよう工夫しています。

            また、内側からテントの取り付けが出来ることや、光をある程度通すので内側が明るくなることもシートの利点です。

             

            いかがでしたでしょうか?

            貴重な建物を守るため、このように様々な配慮や工夫をしながら工事は進められています。

             

            詳細は未定ですが、いずれ工事中の様子を一般の方にも見学していただくツアーを開催する予定です。その際には足場や素屋根にも注目してみて下さい。

             

            次回の工事だよりは飾り石についてお届けします。

             

             

             

             

             

             

             

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